巨人坂本、大城が陽性 “隠れコロナ”感染懸念も開幕強行へ
「特に開幕に影響はない」
当然、他の11球団にとっては対岸の火事ではない。かねて感染症の専門家たちは、「感染者が出ることを前提に動くべきだ」と指摘してきた。選手、関係者は「見えない敵」と戦いながら野球をする。リスク管理とケアが重要になるわけだ。
だが、現在、NPBが細部を詰めている「ガイドライン」もまだ、不完全な部分があるという。コロナ感染予防における「体調不良」についての規定がその一つだ。これによると選手は、医師から検査の必要がないと判断された場合も、本人や家族の中で体調不良を訴えると、7日間は自宅待機になるという。
球界OBが言う。
「自宅待機をするにしても、その分を登録日数に換算するというような具体的な対応策がないようだ。単に試合に出られなくなるだけなら、選手は不利益を被る。家族のことを隠してでも、試合に出る選手がいるかもしれない。その日の試合の先発予定の選手や、クビがかかっているような選手などは特に言い出しづらいはずです。坂本、大城の感染で選手、球界関係者は改めて、コロナの恐怖を感じている。正直に申告できる環境をつくらないと、感染者が出続けかねない」
専門家の中には、「選手全員にPCR検査を受けさせるべき」と言う意見もある。実際、プロ野球とJリーグによる「新型コロナウイルス対策連絡会議」でも、専門家チームから「選手を守るためにも検査を実施することが望ましい」と指摘されていた。プロ野球と一緒にコロナ対策を講じてきたJリーグは、2日にJ1名古屋の金崎が感染したのとは別に、独ブンデスリーガを参考にし、選手、スタッフ、審判ら約2340人について、2週間に1度のペースでPCR検査を受けさせることを決定した。が、プロ野球は斉藤コミッショナーが「検討していく」と言うにとどまっている。
「練習試合が始まったプロ野球では、ベンチでマスクをしていない選手も多い。リスク管理、感染予防の観点では万全とは言い難い。感染が拡大するようだと、再度の開幕延期、シーズンの中断も考えざるを得ないと思います」(前出の藤田氏)
プロ野球は公式戦の新型コロナ対策のガイドラインとして、PCR検査で陽性となった場合は陰性が確認できてからも14日間、自宅待機とすることなどを検討しているが、巨人とNPBは、今回のケースは当該選手に発熱や自覚症状がないため、隔離期間を設ける必要はないとし、5日以降の練習試合も予定通り行う見込み。NPBの井原事務局長も「特に開幕に影響はないと現時点では考えている」とした。
現時点で独自の抗体検査を行ったのは巨人とソフトバンクの2球団。他球団にも「隠れ感染者」が潜んでいる可能性は大いにあるが、それでもプロ野球は6月19日の開幕に突き進む。