大坂なおみ抗議は米スポーツ界を動かした 日本はどうだ?
唯一の不安材料はメンタル
では、大坂は全米で2度目の頂点に立てるのか。「W&Sオープンでの状態を見る限り、プレーに不安はありません」と、スポーツライターの武田薫氏がこう続ける。
「体つきはこれまで以上に引き締まっており、フットワークも軽い。自粛期間中にしっかりと調整してきたことがうかがえます。課題とされたサーブも攻撃的に改良しており、ポイントを稼げるようになった。W&Sオープンでのパフォーマンスを発揮できれば、全米オープンで優勝するチャンスは十分にあると思います。唯一、不安材料があるとすればメンタル面です。今回の大坂による抗議行動は良くも悪くもテニス界で波紋を呼んでいる。全米で対戦する相手が、通路などですれ違った際に『何でウィズドロー(棄権)したの?』などとささやいて精神的な揺さぶりをかけてくることも考えられる。今大会は無観客とはいえ、周囲からの雑音も耳に入ってくるでしょう。精神的な動揺を克服して乗り越えることができれば、2度目の優勝も見えてくる」
■「テニスより重要なことがある」
その大坂は棄権を表明した際、理由を自身のツイッターでこう述べた。
「私はアスリートである前に黒人女性だ。自分のテニスを見てもらうよりも、もっと重要なことがあると感じている」
この思いは世界に発信され、多くの人々の賛同を得た。
ハイチ系米国人の父を持つ大坂にとって、今回の人種差別は他人事ではなかったわけだが、こうしたアスリートの毅然たる抗議行動は日本国内ではめったに見られない。