全日本大学野球選手権で注目 ドラフト上位候補4人の「武器と泣きどころ」
滝田一希(星槎道都大/投手・左投げ左打ち)
183センチ、76キロの最速153キロ左腕を地元・日本ハムは「上位候補」と公言している。
1回戦の大商大戦。5回途中6安打5失点で敗退したが、視察した日本ハムの稲葉篤紀GMは「改めて素晴らしい投手と感じた」と評価は不変だった。
全校生徒が80人ちょっとの寿都高時代は、一度も北海道大会に進めなかった。そんな投手がなぜドラフト1位候補にまで成長を遂げたのか。前出のスポーツライター・安倍氏がこう言う。
「星槎道都大の二宮至監督が春の大会で北照の試合を見に行った。その時の相手が寿都で、『1番・投手』だった滝田の足の速さ、ベースランニングを見て運動能力に惚れたそうです。ただ、母子家庭で育ち、6人きょうだい。経済的な事情を考えて高校を出たら野球をやめて就職するつもりだったといいます」
6人きょうだいの5番目。女手ひとつで育ててくれた母の美智子さんが、昨年5月、心筋梗塞で亡くなった。まだ52歳だった。安倍氏が続ける。
「金銭面はお兄さんやお姉さんが支えてくれているそうです。もし長男だったら野球をやめていただろうし、もし二宮監督が北照の試合を見にこなければ、滝田の走る姿にピンとこなければ、才能は埋もれていたでしょう」(安倍氏)
何がいいのか。
「左投手が右打者の内角に投げるクロスファイアがいい。少しインステップするので、右打者は自分の腹に向かってくる怖さを感じるでしょう。球の強さと角度、直球と同じ腕の振りから投げられるチェンジアップもいい。まだ粗削りで球種が少ないので、他にも困った時に投げられる変化球が欲しい」
巨人で8年間、引退後は中日のコーチやDeNAの二軍監督などを務めたプロの眼力が、原石を発掘し、磨き上げたのだ。