「秘薬秘具事典」渡辺信一郎著
■江戸のバイアグラは老人も“帆柱”のごとくビンビンに
中高年を歓喜させたバイアグラがアメリカから日本に上陸したのは、平成10年のこと。しかし我が国には西洋医学に勝るとも劣らない秘薬が、すでに江戸時代には存在していた記録があるのだ。
渡辺信一郎著「秘薬秘具事典」(三樹書房 3000円)では、江戸の性愛文化の全貌を、数々の文献と絵図によって紹介。閨房用の秘薬と秘具が江戸庶民にいかに浸透していたかが、臨場感たっぷりにつづられている。
7日間服用すれば老人でもビンビンになるとして、バイアグラに劣らぬ効果を発揮していたと考えられるのが「危檣丸(ほばしらがん)」。1787年ごろ、両国の四つ目屋という店で売られていたとされる勃起薬だ。
四つ目屋は薬の処方を企業秘密としていたため含有物は定かでないが、宣伝書によれば“此薬一廻り御用ひ被遊候らへば、いかほど弱き男根なりとも、精力を増し、もっとも御老人なりとも、心のままに強くすること、はなはだ妙なり”とある。男根が上向きに起立した様子を“帆柱が立つ”などと形容するが、帆柱丸ではあまりにもそのまま過ぎるため、高いを意味する「危」と帆柱を意味する「檣」を用いて危檣丸と命名したのだろう。