つい、読んでしまう“写真集”
19世紀の植民地時代と、1980年代にフランスから戻ったコンゴ移民がもたらした「フランス的エレガンスへの憧れ」が源流。独自の礼儀作法、行動規範、倫理観を共有。その精神性は表層的スタイルやファッションを超え、もはや「服飾への信仰」/「『道』としてのファッション」と呼ぶべきもの。華麗にして玄妙。高名なサプールは、あたかも聖者/高僧のように社会的にも尊敬と羨望の眼差しを集める。
写真を注意深く見ていくと、対象を克明に「記録する」冷ややかな眼差しというよりも、強い共感やその場の打ち解けた雰囲気が伝わってくる。これは「写真のチカラ」でもあり、「写真家のチカラ」でもあるだろう。
さて、さまざまな矛盾をはらむ社会背景や精神性を理解して、ようやく読者は「本書の存在」を丸ごと受け入れることができるだろう。体裁は写真集。だが、その眼目は「エレガンスという概念」を伝える「ルポルタージュ」ではなかろうか?(青幻舎 2300円+税)
▽みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。