「生きる意味」アルフレッド・アドラー著 長谷川早苗訳
人はみな、自分のものの見方で行動が決まる。一人っ子で母親に甘やかされて育ったある弁護士は、子供時代に女子にバカにされて、女子から完全に距離を取った。そして恋愛や結婚がうまくいくという妄想にふけり、母親を性的願望の対象と見るようになる。
このエディプスコンプレックスは本来のものではなく、母親によって人工的につくられたものである。社会人になってからも、知らない人を避けるようになった。彼の人生の捉え方は「世界が勝たせてくれないから出ていかない」というもので、その行動原理の中にあるのは「理性」でも「コモンセンス」でもなく、「個人の感覚」である。
フロイトらとともに心理療法を確立した心理学者の名著の邦訳。
(興陽館 1700円+税)