「裏昭和史探検」小泉信一著
カラオケなどなかった時代、全国津々浦々のネオン街には「流し」と呼ばれる人たちがいた。新宿のゴールデン街では旧ソ連の元首相に似ている、通称「マレンコフ」が、2曲1000円で歌っていた。「奥飛騨慕情」で有名になった盲目の歌手、竜鉄也は、奥飛騨温泉郷で流しをしていた。真冬に外から暖かい店に入ると、髪に凍り付いていた雪が溶けてポタポタ落ちたという。
高度成長から高度消費社会に移り変わる頃に現れたのが「愛人バンク」。筒見待子は銀座に「愛人バンク 夕ぐれ族」の事務所を構えた。男性会員の入会金は20万円で、見合いをして気に入れば当事者同士で手当を決めて付き合うというシステムだった。愛人というとドロドロしたイメージだったのが、都会的でおしゃれなネーミングにひかれたのか、大学教授や医師、弁護士などのインテリ層が入会。最盛期には数億円の収益を上げたが、1983年に売春防止法違反で摘発された。
他にツチノコ、UFOなど、懐かしいものからバブリーなものまで、昭和を騒がせた風俗を取り上げた面白エッセー。末井昭氏との対談付き。
(朝日新聞出版 1300円+税)