「山藤章二の四行大学」山藤章二著
一人の人間の言動は、それ自体が立派な哲学なのだと説く著者が、ちまたにあふれる情報に対する自らの反応や、思ったこと、考えたことを簡潔に4行に凝縮した「哲学書」。
例えば「老いた。後期高齢者という役所言葉は好きでない。『老人』の方がゆるやかでいい。言語と豆腐はゆるい所に味がある。ゆるさと曖昧こそが日本文化の特質である。近頃の日本の居心地の悪さは、曖昧の価値を見捨てて来たことにある」。「蕎麦の打ち方、ヨガ、古城めぐり、世界旅行、盆栽入門。『第二の人生』のメニューは華やかである。でもよく見ると、肝心のものが抜けている。哲学である。哲学と聞いておびえる必要はない。ふとした思いつきや違和感こそが考える素だ」と。
余韻のある文章が読者を「ひとり哲学」へと誘う。
(朝日新聞出版 790円+税)