「鯖」赤松利市著
35歳の「ぼく」は、船頭の権座が率いる「海の雑賀衆」と呼ばれる一本釣り漁船団の一員。かつて紀州の雑賀崎を拠点に船団を組んで各地の漁場に乗り込んでいたそうだが、残っている団員は5人だけ。権座が有り金をはたいて買った日本海の孤島で寝起きしながら、昔ながらの一本釣り漁を行っている。いずれもスネに傷持つ漁師だが、腕は確かだ。釣った魚は、割烹を営む恵子が買い上げてくれるため、5人はなんとか暮らしていけた。
そんなある日、権座らは恵子の店に招待され、IT企業の社長・村越とそのビジネスパートナーを名乗る中国人のリンを紹介される。リンたちに「海の雑賀衆」の再興計画を持ち掛けられた権座らは、その気になるが……。
元ホームレスの作家による衝撃のデビュー作。
(徳間書店 770円+税)