「白春」竹田真砂子著
元禄14年3月18日、赤穂藩京屋敷留守居役、小野寺十内宛てに江戸から急ぎの書状が届く。小女のろくは、奥方のお丹様に命じられ、呉服所を訪問中の小野寺の元に向かう。
京屋敷の主な役目は、殿様と奥方様の装束やお持ち道具を揃えることで、先日も御勅使御饗応役を務める殿様の装束を揃え江戸藩邸に届けたばかりだった。書状には4日前に藩主浅野内匠頭長矩公が殿中で吉良上野介に対し刃傷に及んだと記されていた。以来、十内は国許と連絡を取りながら対応に追われる。
そんな中、吉良上野介がおとがめもなく生きていると耳にした十内は、予定を早め赤穂に向かう。見送るろくは、主人を監視する忍びの存在に気がつく。
耳が聞こえないろくの視点で十内夫妻の生きざまを描く、もうひとつの忠臣蔵。
(集英社 759円)