「統一協会」櫻井義秀著/中公新書
「統一協会」櫻井義秀著/中公新書
早くも統一教会問題が過ぎ去ったことのように扱われているが、それを原理的に追及するこの本に、合同結婚式の後、韓国に渡って結婚まで地元の教会に住み込んで送る「任地生活」のために15カ条の戒めなるものが張り出されていると書かれている。最初の7カ条だけ紹介しよう。
1.自分を捨てること
2.驕慢にならないこと
3.神様をまず考えること
4.真の父母様の家庭に孝行すること
5.原理講論を読むこと
6.不平不満を言わないこと
7.疑わないこと
私は、「疑う」とは自分に責任を取り戻すことであり、「信ずる」とは相手にそれをゆだねてしまうことだと思っているが、韓国人の女性教会員はどういう教会生活を送っているかについて、「日本ではカルト宗教だけど、韓国では異端だけどカルトじゃないんですよ」「だって霊感商法、韓国でやってないし」と語ったとか。
鈴木エイトの「自民党の統一教会汚染2」(小学館)で鈴木は、一時的なバッシングが終われば政治家は教団に協力すると教団側は見ており、自民党を中心とした政治家との密な関係を小出しにして反撃してくる可能性がある、と言っている。前回の補選で維新が1議席を得たのは統一教会が表向き協力できない自民党の候補ではなく、維新の候補を応援したからだと私は見ている。
宮崎哲弥の次の指摘に自民党や維新の政治家はどう答えるのか。いや、答えられるのか。
「文芸春秋」の2023年1月号によれば、日本人信者が統一教会に献金した4500億円がロンダリングされて北朝鮮のミサイル開発に流用されたという。
「事実なら由々しき事態です。『北朝鮮が脅威だから増税して防衛費を上げる』と主張する自民党の保守派が、日本で集金した金を北朝鮮に送る宗教団体と深くつながっているのだとしたら、保守の正当性に関わる大問題ですよ」
私も宮崎の言う通りだと思うが、岸田自公政権は統一教会に対して質問ばかり繰り返して国民が忘れるのを待っている。
安倍晋三の一周忌に記念すべき何かをしなければならないとしたら、それは統一教会の解散しかないのではないか。いわゆる安倍派がこぞってそれを主張すべきである。 ★★★(選者・佐高信)