米国の不都合な真実を映す 映画「ボーダーライン」の迫真
あらゆる業界同様、映画界にも流行がある。昨年は007シリーズの新作をはじめスパイ映画が多数公開されたが、今年はメキシコ国境問題など麻薬に関連する映画が集中している。
たとえばメデジン・カルテルを興した麻薬王の娘とのスリリングな恋を描く「エスコバル/楽園の掟」(公開中)。オスカー監督キャスリン・ビグロー製作によるメキシコ麻薬戦争のドキュメンタリー「カルテル・ランド」(5月7日公開)。さらにリドリー・スコット監督も、メキシコ麻薬王の伝記映画の製作を進めている。
そんな中でも現代アメリカの抱える闇を暴いたとして高く評価されているのが「ボーダーライン」(公開中)だ。その魅力と時事性の高さについて、映画批評家の前田有一氏はこう語る。
「似たテーマの映画が同時期に重なるのは、それだけ今の米国人にとって深刻な社会問題ということです。本作は劇映画ながら、メキシコ麻薬戦争に対して米国政府がひそかに法を無視した暴力で対応していることをにおわせるなど、表立っては報道されにくい現地の状況を描いています。カナダの誇る名監督ドゥニ・ヴィルヌーヴだからこそ、米国にとっての不都合な真実にも突っ込めたのではないでしょうか」