90種類もある専門医
専門医と聞くと、何かありがたいものを感じるひとも、大勢いるでしょう。専門医には、「スーパードクター」を連想させる響きがあり、安心感があるからです。しかし、その実態は、かなり異なるものです。
専門医は、医学系の各学会が独自に基準を設け、一定の要件を満たしたものに対して与える、その意味で民間の称号に過ぎません。たとえば外科専門医は、日本外科学会が認定する称号です。日本外科学会の会員で、かつ決められた臓器ごとに、決められた手術数をこなすことが、認定の条件となっています。
もともとあまり価値のある称号ではなかったのですが、2002年を境に状況が一変しました。この年、厚生労働省が、専門医の資格を、医師本人や病院の宣伝に使っていいとする通達を出したのです。また、一定の条件を満たした学会に対して、新たな専門医の創設を許可する通達も出しました。
これによって、それまでは医師個人の、一種の自己満足に過ぎなかった専門医資格が、一気に市場価値を帯びることになったのです。と同時に、多くの学会が次々に専門医制度を新設し始めました。その結果、今日までに90種類に迫ろうかというほど、専門医が乱立しています。ひとりで何種類もの資格を取得する、資格マニアの医師も大勢います。患者が思うような、ありがたいものではないのです。
▽長浜バイオ大学・永田宏教授(医療情報学)