医療は循環型に再編される
医療行政の用語に「医療圏」という言葉があり、「1次」「2次」「3次」の3階層に分かれています。
1次医療圏は、公立中学校の学区の範囲。2次医療圏は1つないし複数の市区町村にまたがる地域。そして3次医療圏が都道府県レベルです。
日本全国をこの3階層に分割し、その中で医療ニーズを完結させようというのが、政府の基本方針です。1次医療圏では風邪や腹痛など、ごく日常的な医療ニーズを充足させる。主な担い手は診療所と中小病院になります。2次医療圏では入院を要するような医療ニーズを完結させる。生活習慣病や定型的ながんの治療、脳卒中の治療など、さらに治療後のリハビリや長期療養などです。主役は各地域の総合病院、脇役がリハビリ病院、療養病院などになります。
2次医療圏で手に負えない重症患者は、3次医療圏の頂点に立つ病院へと回されます。大学病院や国公立の大病院、有名私立病院などにあたります。
政府案では1次医療圏に属する診療所・中小病院に、在宅医療と在宅みとりの役割も担わせようとしています。患者、とりわけ高齢者は、1次医療圏から2次、3次へと上がっていき、退院して再び1次医療圏に戻るという循環を繰り返しながら、自宅や施設で最期を迎えるのです。これが2025年問題に対して政府が出した、基本戦略の骨子です。
▽長浜バイオ大学・永田宏教授(医療情報学)