星奈津美さん バセドー病乗り越え知った「練習できる幸せ」
バタフライを泳げてうれしいと感じられたのは、小さい頃に泳ぎを覚えたとき以来でした。そういう気持ちを再び味わえたことが自分にとって大きなプラスになった。本当によかったなと、今は思います。
■リオでは最後のひとカキまで全力を使い切れた
それから1カ月後にはシュノーケルを外して通常のトレーニングができるまでに回復し、おかげさまで半年後の日本選手権で優勝。その4カ月後の世界水泳で金メダルを取ることができました。そして、オリンピックシーズンに入る直前に、先生から「もう、バセドー病ではなくなりましたよ」と告げられました。病気に対する不安から解放され、本番を迎えられたのです。リオでは、「この腕が、この脚がどうなってもいい」と思い、最後のひとカキまで全力を使い切れました。金メダルには届きませんでしたが、すごく充実感がありました。
周りから「病気を克服してすごい」と言っていただくことが多いのですが、私自身は苦労して乗り越えたというよりも、一つ一つの場面で「病気をしたからこそ、こうなれた」と捉えていることが多い気がします。毎日練習できることが当たり前ではなく、幸せなことなんだと感じられましたし、手術をしたからこそ気持ちも体もリセットされ、前向きに頑張れた。病気を通して成長できた、プラスになった。そんなふうに思えるのです。