遺伝子に注目で成果 手術不可の進行・再発肺がんに新兵器
「日本で承認されている肺がんの遺伝子変異を標的とした分子標的治療薬は、EGFR(上皮成長因子受容体)をはじめ、たくさんあります。臨床試験でも、遺伝子変異を選んで分子標的治療薬を用いると、生存期間は延び、治療成績に大きな差が出ます」(光冨医師)
■今は4年半元気な患者も
ROS1融合遺伝子とは、がん細胞の成長を促進する遺伝子変異のひとつで、非小細胞肺がんの1%程度といわれている。クリゾチニブは、ROS1融合遺伝子陽性小細胞肺がんに対する、初めての治療薬となる。
「1%というと少ないように思いますが、肺がんの年間患者数13万8000人から見ると、肺がんのほとんどが非小細胞肺がんであることから、ROS1融合遺伝子陽性の肺がん患者数は1000人をはるかに超えます」(国立がん研究センター東病院呼吸器内科長の後藤功一医師)
つまり、今回の薬がかなりの人数の患者を救うことになるのだ。
■奏効率は70%
この遺伝子変異の進行がん患者127人(うち日本人26人)にクリゾチニブを1日2回投与した国際共同第2相試験における奏効率は、69・3%。ほとんどの患者に腫瘍の縮小効果が得られた。さらに薬を投与後、腫瘍が進行せずに患者が生存した期間を示す無増悪生存期間の中央値は、13.4カ月だった。