外科医にとって「自己管理」は不可欠な適性といえる
医師不足や偏在など、いくつも要因はありますが、一方で「自己管理」ができない医師が増えているのも事実です。
■“流れ”に巻き込まれると悲劇に
私が医学部に入学した70年代後半に比べ、いまは医学部の定員が増えています。同時に少子化によって同学年の受験者数が減ったことで、かつての20倍くらい医学部へ入学しやすくなっているのです。医学部の入学者は偏差値も下方に拡大し、裾野が格段に広がりました。こうした状況とともに、「なんとなく医者になりたい」といった漠然とした動機で入学してくる学生も増えています。
医学部の定員が増えたのは、医師の数が足りないからです。地域偏在の問題もあって、地方は医師が少ないため一人一人の仕事が増えて忙しい。都市部は医師の数は多くても、先進的で高度な医療が次々に行われることで忙しい。結果的に地方も都市部も医者が足りないというのが現状なのです。
そうした状況の中に、明確な志望動機を持たずに漠然とした考えで医師になった若者が飛び込んでくると、多忙な“流れ”に巻き込まれてしまいます。わけがわからないまま自己管理ができずに流され、場合によっては過労死してしまったり、自ら命を絶ってしまう悲劇が起こってしまうのです。