溶かした便を直接移植して腸内細菌叢のバランスを改善
■潰瘍性大腸炎の約7割に症状改善が
人の腸管には約1000種、数にして100兆個以上の腸内細菌が生息し、腸内細菌叢を構成している。潰瘍性大腸炎などの腸疾患は、その腸内細菌のバランスが乱れていることが分かっている。そこに生きた腸内細菌の塊である便を直接移植することで、腸内細菌のバランスの乱れを抑制する可能性がある。
同院ではFMTの前に抗菌薬療法(AFM療法)を行う併用療法を「A―FMT」と名付けた。
「A―FMTを考案したのは、単純にFMTをするだけでは満員のスタジアムに無理やり観客を押し込むような作業で、腸内細菌の効率的な定着は望めないと考えたからです。AFM療法で腸内細菌叢を減らして、乱れた環境を一度リセットすることで移植する腸内細菌の効率的な定着を狙ったのです」
潰瘍性大腸炎の治療効果については、あくまで短期間の症状スコアでの評価でしかないが、約7割に症状の改善が認められたという。
しかし、病気の性質上、長期間の検討が必要であり、現在腸内細菌、臨床データの高度な分析を進めている。これまでの研究成果では、腸内細菌叢の種類である「バクテロイデス門」の劇的な変化がFMTの治療効果に強く関与することが示されたという。