日本乳癌学会“強く推奨” 遺伝性乳がんは予防切除すべきか
ウチは、がん家系だから……。家族をがんで亡くすと、そんなふうに遺伝的な影響が語られることがあります。がん死が相次ぐと、そう思いたくなる気持ちは分からなくもありませんが、遺伝が原因のことはほとんどありません。まったく同じ遺伝子を持つ一卵性双生児が、同じがんにかかる確率は1割程度です。
がんの実情と一般の方の意識にかなりズレがある状況だけに、日本乳癌学会の指針改定はちょっと気になります。遺伝性の乳がんについて、将来がんになるリスクを減らすため、反対側のがんのない乳房を予防的に切除する手術を「強く推奨する」と改定したと発表したのです。
先ほど、遺伝の影響はほとんどないと書きましたが、乳がんは別。遺伝的な理由で発症するタイプが10%程度存在します。BRCA1とBRCA2という2つの遺伝子の異常があると、乳がんのほか卵巣がんになるリスクが高くなることが分かっているのです。医学的には「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」と呼ばれます。
男性がこれらの遺伝子変異を受け継ぐと、前立腺がんや、すい臓がんになりやすい。欧米では、予防的に前立腺を全摘する人もいます。