著者のコラム一覧
小宮孝泰

1956年、神奈川県小田原市生まれ。明治大学卒。80年、渡辺正行、ラサール石井と「コント赤信号」でTVデビュー。91年に佳江さんと結婚。2001年、31歳の佳江さんに乳がん発症。12年に永眠。今年9月に、出会いから別れまでの出来事をつづった「猫女房」(秀和システム)を上梓。

<2>家を買う 猫好きの妻のために堂々と飼えるマンションを

公開日: 更新日:

 だが、佳江さんが新居に暮らしたのは1カ月にも満たなかった。

がんが肝臓に転移していました。肝臓に転移したということは、治る見込みが限りなく少ないということですから、この頃は彼女も自分の死を認めていました。自分でカタログを見て介護ベッドを選び、そこのリビングルームに置いて寝起きした。料理上手でしたが、衰弱していたので、残念ながら調理場に立つことはかないませんでした。その代わりに冷蔵庫やキッチンに『ここは、こうやって』といったメモをいろいろ貼ってくれました。僕は仕事で家を空けることもあり、そんな時に痛みが出ると大変ですから、引っ越しが完了するまでは義理の母の家に預かってもらったのです。ですから、ここにいたのは1カ月に満たなかったですね」

 メモは6年経った今もずっと同じ場所に貼られている。

「ただ、引っ越してから2度ほど花火大会を見ることができた。こんな幸せな時間のために新居に引っ越してきたんだよ、と妻は言いたかったのかもしれません。最後にしてあげられた僕からのプレゼントってなるのでしょうかねぇ……」

 佳江さんは資産価値のことまで考えてこの家を選んでいたという。その後も住み続ける夫が路頭に迷わないよう、妻からのプレゼントだった可能性もある。

(つづく)

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇