洞口依子さん がん手術から10年後に発症したリンパ浮腫を語る
子宮頚がんの治療後、その病気の体験を「子宮会議」というタイトルの本に記しました。2カ月という長い入院生活、その後の苦悩や葛藤、喪失感は幾度となくネガティブなブラックホールに引きずり込まれそうになりました。踏みとどまれた理由は何かと振り返ると、「生きたい」と思うシンプルな気持ちに思えたんです。「もっと生きて、夢を見て、何かを生まなければ」と。
何事も元気で、生きているうち。あれこれ思い出すこと、したためること、そして先輩から譲り受けたもろもろを、若い世代へ継承するという重要な役割も含めて。
病気を知るまでは、若さにかまけて時間を随分浪費しました。40歳手前で肩を掴まれ「生と死は表裏一体」と気付かされた。大げさに聞こえるでしょうが、今は生きている時間の貴さを深く感じられます。夢見るように、生きていることをもっと楽しみたい。心からそう思っています。
リンパ浮腫でも、へっちゃらなんだから! って(笑い)。
=聞き手・松永詠美子
▽どうぐち・よりこ 1965年、東京都生まれ。80年、「週刊朝日」の表紙モデルに抜擢されて注目を浴び、雑誌「GORO」のグラビアを経て黒沢清監督の映画「ドレミファ娘の血は騒ぐ」で芸能界デビュー。以後、映画、テレビドラマなどに数多く出演。97年に結婚。2004年に子宮頚がんが発覚し、闘病を経て復帰。17年にはマーティン・スコセッシ監督の映画「沈黙―サイレンス―」に出演。著書に「子宮会議 」(小学館)がある。