ステージ4で5割超も 「末期がんは治療しない」という選択
愛川さんと対照的なのが、その年の5月に大腸がんで亡くなった俳優・今井雅之さん(享年54)だ。げっそりと痩せ細った表情で「いっそのこと殺してほしい」とがん告白会見を行った姿は、抗がん剤治療のつらさをお茶の間に印象づけた。現場復帰を望んで抗がん剤治療を選択したが、希望はかなわなかった。
「すべての治療を否定するわけではありません。胃がんも肺がんも大腸がんも、どんながんであれ早期なら積極的に治療する方がいい。9割以上治りますから。しかし、末期がんは痛みを除く緩和ケアなど最低限の治療で済ますのがベターなこともあるのです」(前出の中川恵一氏)
国立がん研究センターの調査によると、ステージ4の胃がんの場合、75~84歳で治療を受けなかったのは約25%で、85歳以上だと56%。肺がんも肝臓がんもすい臓がんも、ステージ4で85歳以上は「治療せず」が5割を超える。
3人はまったく治療をしていないわけではないが、最低限の治療にとどめた2人が最期まで現場をまっとうできたという点では、「治療しない」という考え方に近いだろう。最新の治療法や薬剤が続々と開発されてもなお、こと自分らしい最期を望むなら、「治療しない」という選択肢があることも頭に入れておいた方がいい。 (あすは「愛人にカネを残す」)