医師の考えを押し付けて透析中止に誘導するのは許されない
■サポートが手厚い日本の透析医療は“文化”として根付いている
腎機能の悪化は動脈硬化につながるため、腎臓と心臓疾患は深い関係にあります。これまで私も透析の患者さんを数多く診てきました。そうした経験から、患者さん本人が透析を拒否するケースはそうそうありません。患者さんに透析導入の打診をしたとき、「え、透析はちょっと……」と拒否する人は80代後半から90歳以上の超高齢者がほとんどです。それよりも下の世代の患者さんは、透析が必要だとなれば「お願いします」とスムーズに運びます。
なぜかといえば、それだけ日本の透析医療は手厚いサポートがあることを知っている人が多いからです。公的助成制度が確立している医療費だけでなく、身体障害者手帳を取得した場合は税金の免除や交通機関の割引など、福祉の面でもさまざまな助成を受けられます。
これが、たとえば抗がん剤治療だった場合、医師が「よく効く薬があるんですが、かなり高額で自己負担が増えますよ」と伝えると、「これまでと同じ抗がん剤でお願いします」という患者さんが一定の割合でいるでしょう。しかし、透析は、「高い治療費がかかるんですよね?」とたずねてくる患者さんはまずいません。透析は、身体的なもの以外の負担が軽減される手厚い体制が整っているうえ、フリーアクセスで治療を受けられることを国民の大多数が知っているのです。