「物盗られ妄想」ではなぜ家族が犯人になるのか
なぜ身近な人を犯人にするのだろうか。連載第7回で「認知症の人は励ましの言葉で傷つく」と述べたが、家族のなにげない言葉や行動で、普段から認知症の人が「叱られている」と感じていたら、「はは~ん、私の財布を盗ったのはあんただな。だから私を責めていたんだ」となって、「あんたが盗った」と反撃するのである。「理由もなく叱る」攻撃に対して、攻撃で返すのは人間の心理としては当然だろう。
よかれと思って一生懸命に励ます家族ほど攻撃されやすい。ただ、物忘れがあっても周囲が「大丈夫よ」と受け止めてくれる環境であれば、忘れても大切にされていると感じて、攻撃することはないそうだ。