「いつの間にか骨折…」が引き起こす脳梗塞に要注意
Aさんの場合は折れた骨の端が神経を圧迫してしびれが出たが、なかには「脂肪塞栓症候群」といって、傷ついた脊椎から脂肪滴が遊離して血液中に入り込み、全身の臓器の循環障害を生じ、脳梗塞の原因である「脳塞栓」や、肺動脈の詰まる「肺塞栓」を起こすこともある。
「大腿骨骨折などによく見られますが、ごくまれに椎体骨折でも起きることがあります。軽症なら無症状で経過しますが、皮膚や粘膜での点状出血や呼吸器障害、意識障害を起こすことがあります。短時間で意識障害、播種性血管内凝固症候群、多臓器不全をきたして1~2日で死亡する『電撃型』では、生前に骨折が原因の脂肪塞栓症候群だと診断することは難しいといわれています」
椎体骨折では痛みが出ず、骨折自体に気づかない人も少なくない。これが「いつの間にか骨折」で注意が必要だ。
つぶれた椎体を放っておくと知らず知らずのうちに別の椎体に負担がかかり、2個、3個と骨折連鎖が起こるからだ。1つの椎体骨折が起きると1年以内に別の椎体骨折が起こるとの研究もある。
「すると背中が丸くなり、姿勢が前かがみになって胸が圧迫されて肺活量や食欲が低下する。加えて、骨折連鎖により慢性的な痛みが出てくると抑うつや睡眠障害も起こります。その結果、日常の活動量が減り、さらに骨が弱くなり、筋肉も落ちて体を支えられなくなって最終的には『寝たきり』になるリスクが高まります」