今シーズンこそ花粉症対策…治療方法や日常からできること
つらい。その苦しみから逃れたい
地獄のようにつらい花粉症のシーズンがやってきた。今シーズンは暖冬の影響で花粉の飛び始めが早く、スギ花粉症に悩まされる期間が長期化するといわれている。毎年花粉症に苦しんでいる人はまさに戦々恐々である。
そこで、花粉症対策に役立つ新たな情報をアレルギー性鼻炎治療のエキスパート、大城貴史医師(大城クリニック院長)に聞いてみた。
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東京都の調べでは都民の半数近くがスギ花粉症に悩まされているという。通年性のアレルギー性鼻炎まで含めると、もはや例を見ない国民病になっているのである。
「特に10歳以下では全国的に見ても2人に1人がアレルギー性鼻炎に苦しんでいるといわれており、アレルギー性鼻炎の若年化が問題になっています。一方で、スギ花粉症だけでなく通年性のアレルギー性鼻炎もこの10年間で急増しているのです」と、大城医師。
■免疫の過剰反応が引き起こす
そもそもどうして花粉でアレルギー性鼻炎になってしまうのだろうか。
「私たちの体には、もともと外部から入ってきた異物を抗原として認識し、排除するという免疫機能が備わっています。その中の特定の抗原に対して免疫反応が過剰に起こり、自分に障害を与えてしまう状態がアレルギーなのです。花粉症はスギやヒノキなどの花粉が抗原として認識されることで起こるアレルギー反応で、鼻炎や結膜炎、咽頭炎などの症状を引き起こします」
■アレルギー性鼻炎の治療法
ところで、アレルギー性鼻炎の治療にはどんなものがあるのか。
「大きく分けて3つあります。1つは、経口内服薬や局所噴霧薬による薬物療法。2つ目は手術療法。3つ目は舌下免疫療法です。内服薬による薬物療法は薬の種類によっては眠気やのどの渇きなどが出てしまいます。噴霧薬による薬物療法は血管収縮成分が含まれており、使い続けることで逆に症状が悪化することがあるので注意が必要です。手術療法はレーザーで鼻の粘膜をタンパク変性が起こる程度に焼き、アレルギーの起こる部位を物理的に減少させることで症状を軽減させる方法。薬物療法で症状をコントロールしにくい方がこの方法を選ぶことが多いですね」
舌下免疫療法とはどんな治療法なのか。
「アレルゲンを舌の下に投与する治療法です。スギ花粉症の舌下免疫療法は保険も適用され、すでに一般的な治療になっています。ただ、数年間にわたって継続して投与を続けなければなりません。大学レベルでは飲み薬による経口免疫療法の研究が行われています。患者さんにとっては舌下投与より簡単なので、将来的にはこの経口免疫療法が注目されるかもしれません」
■対策の一歩 日常生活からチェック
日常生活の中でできる対策はあるのだろうか。大城医師はアレルギー性鼻炎対策の一番の方法は、アレルギーの原因になるものと接触しないことだと言う。
「そのために外出する時はマスクや眼鏡の着用が必要なのです。同じ理由で、掃除がキレイに行き届いていて外からあまり花粉やホコリが入ってこない気密性の高い家に住んでいる方がアレルギー性鼻炎症状が出にくいと言われています。服もウールのように花粉が付着しやすいものよりもナイロン素材のようにパパッと払えば花粉が落ちるものの方がいいですね。花粉を家の中に持ち込まないことが大切なのです」
外出先から帰ったら、手洗いやうがい、鼻洗浄も行った方がいいそうだ。
■手軽に摂れる乳酸菌で腸内環境を改善
一方で、食生活も対策の一つとして重要なカギを握っている。
「花粉症はアレルギーの1疾患。アレルギー体質でlgEの抗原抗体反応が起こりにくい、起こりやすいという観点で考えた場合、腸内細菌叢(そう)が整っていた方が基本的にいいと言われています。だから花粉症の抑制にも腸内細菌叢を整えた方がいいわけです。そうなった時に注目されるのが味噌や納豆などの発酵食品です。発酵食品がアレルギーを抑制することは昔からいわれていて、その代表がヨーグルトの乳酸菌。もちろん、他の発酵食品もいいのですが腸内細菌叢をどう整えられるかが課題なのです」
免疫機能をつかさどる免疫細胞のおよそ6割は腸に集中しているため、腸の環境を整えることが正常な免疫機能の活動につながるというのだ。
また、花粉症は2つの免疫細胞のバランスと密接な関係があり、そのバランスが崩れるとアレルギー反応を引き起こすヒスタミンを発生させやすくなるという。乳酸菌は腸内環境を整えるだけでなく、免疫細胞のバランスを整える働きがあることも検証されている。例えば、東京近郊のスギ花粉症患者約100人を対象にした臨床試験では、乳酸菌を8週間毎日摂取した人は鼻の症状が改善され、加えて、血液検査でもアレルギー反応の強さを示す数値が下がり、免疫バランスの改善傾向が認められたのである。ヨーグルトなら薬を飲んでいても安心して食べられる。試してみない手はないだろう。
花粉のアレルギーは酷くなってからでは改善しにくい。薬で症状を抑えるのも手術療法を実行するのも、あるいは腸内細菌叢を整えるのも、早めに取り組むことが大切なポイントだ。まずは、今日から始めたい。