がんは制圧できても住めない地球になれば人類は消滅する
近所に2人の天才児がいます。私も妻もかつてこんな天才児に出会ったことがありません。
Aちゃんは小学3年生の女の子で、幼稚園の頃から我が家に遊びに来ます。天才と思う特技は「動物と会話ができる」こと。犬が吠えて向かってきても、Aちゃんは自分から近づいていきます。かじられても離しません。そして、どんな犬とも仲良くなるのです。
幼い頃は、どこまでも犬を追っかけて行くので、迷子になるのが心配でした。ニワトリでも、抱きかかえて、突っつかれて血が出ても離しません。破格のワイルドタイプです。
最近、お母さんの言うことをなんでも聞くという条件で、とうとう黒い柴犬を飼ってもらえることになりました。Aちゃんは、現代人の型にはまらないで、このまま育ってほしいと思う私はわがままでしょうか。
向かいのI家に住むY君は、あと2カ月で5歳になります。アメリカンスクールに通っていて、午後はおばあちゃんと一緒に過ごしています。
たまたま家の前で、お母さんとY君の会話を聞いて驚きました。96歳のひいばあさんが先日亡くなった時の話です。
「夜中、顎が上下に動いて呼吸が止まった。亡くなったのは11時15分。……焼き場に行った……骨は白かった」
そんな話をしていたY君に、私は思わず声をかけました。
「すごい記憶力!」
それからY君は我が家に3回、遊びに来ています。そのうち2回はトランプを持ってきて、「神経衰弱」をやりました。裏向きにしてバラバラに並べたカードの中から、同じ数字のカード(ペア)を見つけていきます。
驚いたことに、Y君は私と妻がめくったカードの数字をすべて記憶しています。しかも、じっと注視しているのではなく、あちこち見渡しているのに記憶できているのです。妻は3ペア、私は1ペアだけしか取れず、あとはすべてY君が手にしました。彼の完勝です。
次に遊びに来た時は、大相撲の絵柄のトランプを持ってきました。Y君は、お相撲さんの難しい名前をすべて漢字で覚えていました。神経衰弱もまたわれわれは完敗でした。聞けば、I家の大人たちもY君には勝てないといいます。
■コロナ蔓延は報いかもしれない
話は変わりますが、宇宙ができたのは137億年前で、地球は46億年前に太陽の惑星になったといいます。二足歩行の霊長類、人間の祖先が現れたのが600万年前。1万年前に氷河期が終わり、温暖な気候となって農耕が行われるようになりました。
18世紀半ばの産業革命以降、化石燃料の使用で大量の温室効果ガスが排出され、さらに森林の減少によって大気中の温室効果ガスの濃度は急激に増加しました。これが地球温暖化の原因と考えられています。
南極と北極の氷は解け、風雨災害が頻発しています。地球全体の気温を下げて、自然と共に生きられる地球に戻せるでしょうか? いや、もう遅いでしょう。今から対策するのでは遅いのです。がんは制圧できても、住めない地球になって人類は消滅する……これを否定できなくなっています。人類滅亡を少しでも遅らせるように努力するしかありません。
世界中が一緒になって地球を守らなければならない時に、自国ファーストのリーダーが出てきました。何よりも自国経済を最優先しています。
そして、人類を脅かす新型コロナウイルスが世界に広がりました。今度のウイルスはとても手ごわい。無症状の感染者をつくって蔓延する、これまでにない挑み方をしています。全世界で何十万人死ぬか分からない。人間が、わが物顔に地球を壊してきた報いなのかもしれません。
昨年、アフガニスタンで銃撃され亡くなった医師、中村哲さんの言葉を思い出します。
「日本の富は日本の自然だ。自然を守ることが大切だ」
スウェーデンの環境活動家グレタさんは、17歳にして地球の危機を叫んでいます。
Aちゃん、Y君、近所では他にも小学生の3きょうだい、スケボーの上手な小学生も「おはよう!」「こんにちは」とあいさつしてくれます。そして、遠く離れて暮らしているけれど、送られてくる動画で目にする生まれて5カ月のかわいい初孫の成長が、私にとっては生きる源です。
地球の人類もまだ捨てたものではない――そう思い直すことにしました。彼らが幸せに過ごせるように、われわれは少しでも地球の環境悪化を抑え、自然を守らなければなりません。
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