著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

ワッキーが告白した中咽頭がん HPV陽性タイプは治りやすい

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 報道によると、4月上旬に首にしこりのようなものを感じて受診したそうで、リンパ節への転移が疑われます。転移の事実は公表されていませんが、もしそうだとすると重要なことが見えてくるのです。

 ここからあくまでもリンパ節転移があった場合の一般論として話を進めます。リンパ節転移ありでステージ1なのは、HPVというウイルス感染の有無が影響しているのです。

 HPVに感染していなくてリンパ節転移がある中咽頭がんはステージ3以上になります。ところが、HPVに感染している場合は、原発の中咽頭がんが4センチ以下、リンパ節への転移が6センチ以下でリンパ節の外に広がっていなければ、ステージ1と分類されます。

 ステージ3と1では、大きな違いですが、それが意味するところは、HPV感染がある中咽頭がんは、化学放射線が効きやすく、治りやすいということなのです。

 咽頭がんや喉頭がんの手術では、嚥下や咀嚼、発声など生活に重要な機能が損なわれる恐れがあります。音楽プロデューサーのつんく♂さん(51)は、生きるために喉頭がんを手術で克服したことは大きな反響を呼びました。記憶に新しいでしょうが、化学放射線療法なら、発声の機能を守ることができます。俳優の村野武範さん(75)や音楽家の坂本龍一さん(68)も、声を失うことなく、仕事に復帰されています。

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