ワクチンが逆効果に…「フィリピンショック」はなぜ起きたか
ワクチンによって誘導される免疫が不十分の人には、ワクチンが逆効果になるということだ。
■「悪い抗体」を誘導しやすい人がどれくらいいるか
新型コロナウイルスに近縁のSARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルスでも、ADE現象は起こりうるとしてワクチン開発は暗礁に乗り上げていた。もちろん、だからといって現行の新型コロナワクチンでも同様なことが必ず起こるというわけではないが、識者の間ではその可能性がわずかでも、リスクは注視すべきとの声は少なくない。
現時点では、新型コロナウイルスのワクチンで悪い抗体を誘導しやすい体質の人がどれくらいいるかがわからない。もし少数の人でも悪い抗体をつくりやすいとすれば、ワクチンの有効率がいくら高くても、一部の人にとってはワクチンで感染を防御できないばかりか発症率や重篤化するリスクを高めてしまう。
しかも、それは統計的には表れにくい。仮に90%の人にとってワクチンが有効でも、1%の人にとってはワクチンが有害である(残り9%の人には有効でも有害でもない)とすると、残念ながら数万人ほどの規模の治験ではなかなか有害例が見えてこない。
ワクチンの有効性が高いと、当然ながらワクチンを受けて発症した人が少なくなり、ワクチンを受けたがゆえに重篤化してしまった人の発見が困難になるのだ。