全米で年100人死亡というが…ヒアリは本当に殺人アリなのか
「ヒアリもお尻の先に毒針があり、人を刺すことがあります。毒は主にアルカロイド系の物質で、ソレノプシンと呼ばれています。細胞膜を傷つけ、ミトコンドリアの働きを妨害し、神経を麻痺させる作用があります。ただし、刺されても毒の量はごくわずか。1匹や2匹に刺されたからといって、それで命を落とすようなことはありません」
アナフィラキシー(全身性の強いアレルギー症状)に関しては、刺された人の3%に症状が出るという報告がある。ハチ毒と共通の成分が含まれているため、いままでヒアリに一度も刺されたことがない人でも、ハチ毒アレルギーがあれば、アナフィラキシーを発症することがある。しかし死に至ることはほとんどないようだ。
「以前、環境省のパンフレットに『全米で年間100人以上が死亡』と書かれたことがありますが、根拠がなく、すぐに削除されました。どうやら『殺人アリ』の称号は大袈裟すぎたようです」
ただし刺されれば、それなりに痛い思いをするという。厚生労働省の資料によれば、「刺された瞬間は熱いと感じるような激しい痛み」があり、「やがて刺された痕がかゆくなる」とある。傷はニキビ大から直径2センチ程度に赤く腫れ、その中心には、毒で死んだ細胞が白い膿になってたまる。また海外で刺された人の証言などによれば、「ハチに刺されたのと同じくらい痛い」という。