“予言”を上回る超回復 池江選手の五輪と発症年齢の関係
その奇跡を現実にしたのは、池江さんの努力のたまものですが、医師からみて、その努力を可能にした大きな要因は、発症年齢だと思います。
白血病は小児のがんの代表で、小中学生での発症も珍しくありません。もしもう少し早く、たとえば中学生くらいで発症していたら、移植前に必須の抗がん剤の影響を受けていたかもしれません。成長期に抗がん剤などを受けると、成長障害で低身長になることがあるのです。
池江さんは18歳で発症し、早川さんの発症は20代。2人とも競技の中断を余儀なくされたとはいえ、体が出来上がっての発症だったのは、競技を続ける意味では不幸中の幸いだったかもしれません。
ほかのがんはどうでしょうか。肺や肝臓を部分切除した場合は、残った部分が元の機能を補うように肥大して、回復することが多い。もちろんケース・バイ・ケースですが、たとえば30%切除したからといって、機能が3割減にならないのはそのため。大腸がんもそうで、人工肛門になっても、体力面での影響はほとんどありません。
体力に影響があるのが何かというと、胃がんと食道がんです。ソフトバンク球団の王貞治会長のように胃がんで胃を全摘したり、食道がんで胃を食道のかわりに使ったりすると、激ヤセします。小澤征爾さんは食道がんの手術後、「着られる服がなくなった」とこぼしたそうです。
激ヤセの原因は、胃に備わっている食べたものをためてタイミングよく十二指腸、小腸へと送り出す機能が損なわれ、消化吸収が悪くなるため。こうなると、体力の低下が心配です。ちなみに、現役世代がこれらのがんになると、スーツの新調代に出費がかさむといわれています。