著者のコラム一覧
下山祐人あけぼの診療所院長

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

「噛めない・のみ込めない」をサポートするのが言語聴覚士

公開日: 更新日:

 食事ができるようになれば、体力も取り戻せ、寿命が延びることもあります。

 つまり言語聴覚士に必要なのは、知識や技術に加えて、繊細な心配り、観察力、記憶力、相手が表現したいことをくみ取る洞察力や共感力です。いわば食生活のアドバイザーである言語聴覚士は、その人らしい生活をサポートする在宅医療において、なくてはならない存在なのです。

 私たちが出会った患者さんで、90歳代前半の女性がいました。かつて入院中にゼリーを喉に詰まらせた経験がありましたが、元来食べることがとても好きな方だったので在宅医療に変えたことをきっかけに、口から物を食べるリハビリ(嚥下訓練)に挑戦したいとのことでした。病院に入院していては、「誤嚥肺炎のリスクがあるから」と、患者さんの希望は受け入れてもらえないかもしれません。しかしそこは、患者さんの生きる喜びを重要視する在宅医療です。言語聴覚士が家族とともに嚥下訓練を開始しました。そして最終的には、念願のゼリーを口から食べられるようになったのです。

 患者さんは5カ月ほどで旅立ちましたが、家族の「おばあちゃんはゼリーを食べられた時、ものすごくうれしそうだった。もっと、もっとと言ってくれた。最後の方は1口、2口だけだったかもしれないけど、食べることで前向きな気持ちが生まれたのか、『今日はお化粧をしたい』と、お気に入りの口紅を塗ったり、おしろいをはたいたりして、おばあちゃんらしく日々過ごせたと思います」という言葉が忘れられません。

【連載】最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  2. 2

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  3. 3

    参院選で自民が目論む「石原伸晃外し」…東京選挙区の“目玉候補”に菊川怜、NPO女性代表の名前

  4. 4

    NiziU再始動の最大戦略は「ビジュ変」…大幅バージョンアップの“逆輸入”和製K-POPで韓国ブレークなるか?

  5. 5

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  1. 6

    サザン桑田佳祐の食道がん闘病秘話と今も語り継がれる「いとしのユウコ」伝説

  2. 7

    我が専大松戸の新1年生は「面白い素材」がゴロゴロ、チームの停滞ムードに光明が差した

  3. 8

    逆風フジテレビゆえ小泉今日子「続・続・最後から二番目の恋」に集まる期待…厳しい船出か、3度目のブームか

  4. 9

    新沼謙治さんが語り尽くした「鳩」へのこだわり「夢は広々とした土地で飼って暮らすこと」

  5. 10

    石橋貴明のセクハラ疑惑は「夕やけニャンニャン」時代からの筋金入り!中居正広氏との「フジ類似事案」