病気を媒介するマダニは体重の100倍の血を吸う吸血性のダニ
マダニは雑草や低木の葉の裏などに付着して、寄生する相手が通過するのを辛抱強く待ち構えています。ノミなどと違ってジャンプ力がまったくないため、人や動物が葉に擦れるタイミングでしか乗り移ることができません。うまく宿主に取りつくと、吸血しやすい場所を探して、ゆっくりと移動を開始するのです。 場所を定めると、小さい顎で皮膚をかじって、少しずつ切り破ります。皮膚に穴が開くと、次に口下片と呼ばれる細長いストロー状の器官を真皮に達するまで深く差し込みます。口下片には「返し」が付いていて、簡単には抜けないようになっています。さらにセメント様物質と呼ばれる成分を唾液に混ぜて分泌します。その名のとおり固まるとセメントのように硬くなり、口下片を完全に固定するのです。これで寄生が完成し、いよいよ吸血の始まりです。
■マダニが「自然界の薬理学者」と呼ばれるワケ
吸血は数日から1週間以上続きます。その間、宿主に気づかれないよう、唾液に混ぜて鎮痛物質や抗炎症物質を繰り出していきます。また宿主の血液が固まってしまっては吸血できなくなってしまうため、それを阻止する必要があります。そこで、抗血小板物質、抗血液凝固物質、抗血管収縮物質など数種類の成分を巧みに操りながら吸血を続けるのです。