西郷輝彦さん急逝 前立腺がんは「NET化」すると1年生存率27%
西郷さんがユーチューブに投稿された画像を拝見すると、胸の病巣の一部は確かに改善しているように見えますが、上腕骨にはがんの骨髄への浸潤と思われる影が確認できます。しかも、「がんが消えた」とする一方で、PSA値は800まで上昇したそうです。
その経過から推察されるのは、前立腺がん細胞の一部が変異した可能性です。PSMA治療は、変異する前の細胞の性質に反応するため、変異した細胞には効きにくくなります。そうすると、同じ治療に対し、一部の転移病巣に効果があり、ほかには効果がないということがまれですが、起こりうるのです。そうだとすると、変異前の治療なら、より効果的だったかもしれません。
もう一点考えるなら、神経内分泌腫瘍(NET)化した可能性もあるかもしれません。NETは肺の小細胞がんのような性質を持つことが知られています。前立腺がんが進行しながら、元の性質を変えてNET化し、肺などに転移することが注目されているのです。
NET化した前立腺がんの治療は、肺の小細胞がんと同じ治療を行い、抗がん剤のシスプラチンとイリノテカンを併用します。それでも進行が極めて速い。1年生存率は27%、2年生存率は10%とされます。
がんは、早期発見を心掛け、病理検査を欠かさず、その性質に即した治療を選ぶこと。西郷さんの闘病生活は、その重要性を物語っていると思います。ご冥福を祈ります。