阪神・淡路地域の郷土料理 いかなごのくぎ煮は春の味
春といえば、いかなごのくぎ煮。今年も、岡山に住む義母が手作りのいかなごのくぎ煮を送ってくれた。
播磨灘や大阪湾では、毎年2月末から3月初めに、いかなごの新子(稚魚)漁が解禁される。この水揚げされたばかりの新鮮な新子を醤油、ざらめ、しょうがで甘辛く煮詰めたのが、いかなごのくぎ煮だ。阪神・淡路地域の郷土料理で、大量にいかなごを仕入れてくぎ煮を作り、親類や友人知人に送る人も少なくない。
記者が初めていかなごのくぎ煮を食べたのは、阪神・淡路大震災のボランティアをしていた時だ。神戸市長田区でひとり暮らしの高齢者を訪問するのが主な活動。そこで門脇さんという70代の女性と親しくなり、ボランティア活動から離れた後も、家人(当時は家人ではないが……)と3人で食事をしたり、旅行をしたりしていた。その門脇さんが毎年、春になるといかなごのくぎ煮を作り、大きな食品保存容器に詰めて送ってくれていたのだ。
「門脇さんのいかなごのくぎ煮がきっかけで作るようになったのよ」と義母。新鮮ないかなごを仕入れるのは結構大変だと聞く。作るのだって面倒だ。少なくとも自分では作れない。心より感謝しながら、ご飯に良し、酒に良しの春の味をいただいた。 (和)