ドナー不足解消の手段として「異種移植」は大いに期待されている
前回も少し触れましたが、人間への異種移植に使う臓器の提供動物としてはブタが最適だとされています。人間に近いチンパンジーやヒヒといった霊長類のほうが向いているのではないかと思われるかもしれませんが、霊長類の臓器は人間に適した大きさになりにくいうえ、人間と近いため人獣共通感染症を持ち込むリスクが高いと考えられているのです。また、そもそも頭数が少ない種族も多く、動物愛護や倫理的な観点からも好ましくないとされています。
一方、ブタの臓器はサイズを含めて解剖学的にも人間に近く、ブタは繁殖力が強いうえに食肉を目的に飼育されていることもあって、倫理的な問題も少ないと考えられているのです。
■人工臓器や再生医療にも欠点がある
心臓移植しか治療法がない患者に対するドナー不足の問題を解消する手段のひとつとして「人工心臓」があります。近年、技術的にも大きく進化していますが、あくまでも人工物なので、生体の臓器と比べてデメリットがあるのもたしかです。たとえば、出血しやすかったり血栓ができやすい状態の人は、合併症を起こす可能性が高くなります。また、糖尿病などの持病があって傷が治りにくい場合、人工的な異物を埋め込むにはリスクがあります。