著者のコラム一覧
石原藤樹「北品川藤クリニック」院長

信州大学医学部医学科大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

解熱剤を使うと治りが遅くなるのか? 英国一流医学誌が報告

公開日: 更新日:

「熱は下げた方がいいのでしょうか、それとも悪いのでしょうか?」

 クリニックの外来でもよく聞かれる質問のひとつです。人間の体はいろいろな場合に熱を出します。今の時期に熱が出る原因の多くは、新型コロナのような感染症熱中症です。この2つの病気は同じように熱が出ますが、その原因はまったく違います。

 熱中症は周囲の温度が上昇することで、体が熱せられてしまうことにより起こるので、熱を下げないと命に関わります。一方で新型コロナのような感染症では、体が病原体に対抗して炎症を起こし、それが熱の原因となるのです。

「この熱は体が必要だから出しているので下げてはいけない」という意見があります。たしかに、「熱が高い方が病気は早く治る」というような研究結果があるのですが、その一方で「熱が高いとそれだけ死亡のリスクが増加する」というような研究もあります。どちらが正しいのでしょうか? 今年の「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」という一流の医学誌に、これまでの臨床データをまとめて解析した論文が掲載されました。それによると、解熱剤などを使用して熱を下げても、下げなくても、特に病気の経過に変化はありませんでした。

 解熱剤は無理に使う必要はありませんが、つらい時に一時的に使用しても、特に体に悪影響はないと考えていいようです。

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