近年注目の心不全に対する緩和ケアはQOLの維持と向上を図る
とはいえ、心不全に対する緩和ケアはまだ始まったばかりで、体制がしっかり整備されているとはいえません。末期の心不全の患者さんのQOL維持に対して、どのような医療やケアが有効かのエビデンス(科学的根拠)も少ないため、具体的にどのようなケアが行われるかははっきり決まっているわけではないのが現状です。
一般的に医療機関の緩和ケア病棟はがんかHIVの患者さんに限定されているので、心不全の患者さんは在宅で緩和ケアを受けるケースがほとんどです。訪問した医師は病状を診ながら酸素呼吸器を使うかどうかやペースメーカーなどの医療機器がきちんと作動しているかの確認をしたり、患者さんや家族の不安などを聞いて対応したり、きちんと食事や睡眠が取れるような処置や指導をしたり、日常での体の動かし方などを指導するといったケアを行います。鎮痛剤などの医療用麻薬が使われるケースもありますが、用量や使用法が厳密で重い管理責任が問われるため、多く使われているわけではありません。それでも、しっかり心不全を管理すれば、緩和ケアでもかなり長期にQOLを維持できるケースも報告されています。