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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「コロナは風邪」論争の不毛 昔から解決できない問題に出口なし

公開日: 更新日:

■キリがない議論

 この「全体」ということがどういうことなのか、少し考えてみたい。軽症で治った人が、自分の知っている範囲と同じような人しか知らない。入院になったという話は聞いたこともないという場合である。これもその通りのことだ。しかし、この話には容易に反論できる。「それはあなたの周りにはたまたま重症化リスクが低い人しかいなかったからだ」と言えばよい。あなたの周囲に多くの高齢者や、肥満糖尿病の人がいれば、その中には重症化して入院するような人が出てくると説明できる。

 ただ、この反論に対して「そんな私が見たことも聞いたこともない人たちのことを言われても知らない。私は私の知っている人の中だけで生きているので、そんなことは関係ない」と言われたらどうだろう。この人にとっての全体は、自分の知っている人ということで、その中ではコロナは確かに風邪に過ぎない。

 しかし、この反論に対してさらに反論を考えてみる。「あなたは自分の知らない人に対しては、無視してもいいというのか。自分の知らない人が重症化してもそれはどうでもいいというのか」というのはどうか。これも十分理屈は通っているが、この反論に対しても反論することはそれほど難しいことではない。

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