「ジェネリック」の急拡大が思わぬ健康被害につながる危険
このところ、全国の医療機関や薬局で深刻な医薬品不足が続いています。咳止め薬、糖尿病治療薬、止血剤、抗うつ薬など、さまざまな薬が入手困難になっていて、処方を断られたという患者さんも少なくないはずです。
こうした医薬品不足の大きな要因とされているのが「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」の供給不足です。ジェネリックは、簡単に言えば「先に開発された新薬(先発薬)と薬効成分は同じで、製剤に関わる基剤成分などが異なるものがある薬」です。新薬のような開発費がかからないため薬価が3~5割ほど安くなるので、患者さんの負担は軽減されます。また、膨らみ続ける医療費を抑制したい国もジェネリックの利用を強く推進したことで、そのシェアは2021年には80%近くまで大きく上昇しました。
そんなジェネリックの急拡大が、結果的にいまの医薬品不足につながります。ジェネリックを製造・販売している製薬会社で不正が相次ぎ、多くのジェネリックの供給がストップしてしまったのです。
20年12月、小林化工が製造する水虫治療薬に睡眠導入剤の成分が混入して死亡などの健康被害が発生した事件を皮切りに、大手の日医工を含む複数の会社で製造工程の問題が見つかり、15社が業務停止や改善命令を受けています。今年10月にはジェネリック業界最大手の沢井製薬で、胃潰瘍などの治療薬の品質試験に不正が発覚し、自主回収が進められています。