認知症の母を可能な限り自宅で過ごさせてあげたいと思っていたけれど…
ご主人を在宅で看取った経験がある95歳の女性。認知症を患っており、さらに胃がんの末期。「母は最期まで自宅で過ごすことを希望するだろう」と、息子さん、娘さんが在宅医療を選択されました。
「ご加減いかがですか」(私)
「ベッドで本を読みながら寝ちゃいますね」(息子)
「どんな本を読まれるんですか?」(私)
「純文学。古典も現在のものも」(本人)
「SFも90冊近く読んでいましたが、最近はそこまで読まなくなったかな。白内障もあるんですけど、本が読めなくなってからでいいと、手術を受けてくれないんですよ」(息子)
「もういいのよ~。本に囲まれて逝けたらいいなぁ、なんて」(本人)
当院が介入してから5年。腹痛や嘔吐を繰り返し、せん妄の症状も現れるようになった時、ご家族の本音を伺ったことがありました。
「食べられなくなった時にどういう選択をするか、お考えはありますか」(私)