被災地では「処方箋」が手書きになるため事故が起こりやすくなる
前回お話ししたように、今年2月、薬剤師として、大きな地震があった能登での災害支援活動に参加しました。
災害時において、「処方箋」は手書きとなる場合が多くみられます。今回の被災地でも私が目にした災害処方箋はすべて手書きでした。普段であれば、ほとんどの医師はパソコンで処方箋を入力しているため、いきなり手書きになることでミスが起こりやすくなります。
また、薬剤師も普段は印刷されたきれいな処方箋しか見ていないので、読み間違いなどが起こるリスクがアップします。たとえば粉薬は、医師はその医薬品の「成分量」で考える場合が少なくありません。医師が言う「粉薬100ミリグラム」とは、「粉薬の成分が100ミリグラム」というケースが多くあるのです。
しかし、市販されている医薬品は10%顆粒や20%顆粒などがあり、10%顆粒は1グラム中に100ミリグラムの成分が含まれています。普段はパソコンに入力した段階で、1回1グラム(成分100ミリグラム)と計算されたものが処方箋に印刷されるのですが、これが手書きになると「100ミリグラム」とだけ記されていることがありえるのです。この場合、処方箋に記載されている通りに100ミリグラムを計量すると、成分としては10ミリグラムしか投与されない……といった事態が起こる可能性があるのです。