膝痛とオサラバ!治療最前線(1)軟骨がすり減る前に膝の半月板の損傷が始まる
「タイヤに空気がいっぱい入った状態、つまり膝の軟骨が正常な状態では、地面からの衝撃を受け止めてクッションのような働きをするので痛みはありません。しかし加齢とともに膝の軟骨は少しずつすり減っていく。骨には神経が多数ありますから、衝撃が骨にダイレクトに伝わることで痛みを感じるようになるのです」(石島主任教授=以下同)
それを避けるために歩行スピードが落ち、歩行距離、歩行時間が短くなっていく。すると筋肉が落ちて膝へさらに負担がかかるようになり、歩くことをより避けるようになる。フレイル(虚弱)やサルコペニア(加齢による身体機能・骨格筋量の低下)の始まりだ。一方、年を取ってもスタスタと速く歩ければ、生活習慣病、心臓疾患、認知症などに好影響を与え、健康寿命が延びることが複数の研究で明らかになっている。
「膝痛をはじめ運動器の痛みは、長らく『年を取れば当たり前』とされ、痛くなってからの対症療法的な治療が中心でした。しかし、痛みが生じるには原因があり、その原因を追求することで予防的な治療が可能となります。最近の研究で、軟骨がすり減る前に膝の半月板の損傷が起こっていることがわかってきた。そして私たちは順天堂大学のスポートロジーセンターとの共同研究で、半月板損傷の前に何が起こっているか、可視化することに成功しました」
将来的には、変形性膝関節症の発症を回避できるようになるかもしれない――。 (つづく)