4月に入って休み・早退を繰り返す子どもが増加…「感染症ドミノ」に要注意!
新年度のスタートとともにX(旧Twitter)上では「保育園の洗礼」なるワードがトレンド入りし大きな話題を集めている。
これは、まだ体の免疫力が十分に発達していない小さな子どもが保育園での集団生活が始まることで発熱や咳、のどの痛みなどの症状を引き起こし、治ったと思ったらまたすぐに再発、休みや早退を何度も繰り返すことを指す。
まさにドミノ倒しのように症状が次々に連鎖するその状態は「感染症ドミノ」といってもいい、母親にとっては無視することのできない切実な問題だろう。
英才教育・英語・知育・右脳開発・勉強にも力を入れ、現在0歳児から2歳児までの保育を行っているリトカ知育保育園羽田(大田区)の渡辺百合園長は現在の状況を、
「この時期は新しい環境にまだなじんでいない新入園児はもちろん、季節の変わり目ということもあってか在園児にも体調不良の子どもが見られます。ただ、例年に比べて今年は特に多いような気がしますね」
と話す。
■家の中で大事に育てられていた子どもが……
一方、いとう王子神谷内科外科クリニックの伊藤博道院長は、
「4月になって幼稚園が始まって数日から1週間した辺りから発熱、咳、のどの痛み、下痢の症状を訴える子どもがどっと増えましたね。今まで家の中で隔離されたような状態で大事に大事に育てられていた子どもが幼稚園に行き始めて外との交流が急に増えたタイミングで熱を出すことが多くなっているのです。いろいろなウイルスに出合う機会が増え、さまざまな種類の風邪のウイルスをお互いに移し合っていくわけですからある程度はやむを得ないとは思いながらも、それを短期間に繰り返すと体調もなかなか完全には戻らなくて苦労されている親御さんも多いのではないかと思いますよ」
と医師としての立場から考察する。
■手洗い・遊具の消毒・食事で体調管理
では、こうした状況の中、現場では具体的にどのような対策を講じ「保育園の洗礼」を防ごうとしているのだろうか。渡辺園長に伺ってみた。
「何といっても除菌対策の徹底が第一です。そこで園児、職員ともに手洗いと手指消毒を徹底するとともに、園児が使用する場所、触れる箇所、さらに玩具やフェンス、ドアノブ、トイレ回りなどのモノを用途に応じてアルコール消毒液や次亜塩素酸水を使い分けて消毒するようにしています。また、保育士には日々の体調管理のため2月から毎日、ヨーグルトを飲んでもらうようにしたところ、飲用前と比べるとよく眠れるようになった、不調を感じにくくなったなどの声があり、この時期例年だと数名体調を崩す職員も出てくるのですが、今年は出ていません」
伊藤院長はこうしたリトカ知育保育園羽田の対策について、
「手洗いや遊具の消毒は基本的なこととして習慣づけるべきですね。ヨーグルトは栄養価も高いし、腸内環境を整え腸内の善玉菌を増やすためにとても望ましいことだと思います。合わせて、善玉菌のえさになるような食物繊維、発酵食品などを一緒に摂るようにすることが大事です」
とアドバイスする。
■日本で流行っていない感染症が出てくる恐れ
長かったコロナがようやく落ち着き、昨冬に流行したインフルエンザも峠を越した今、大人も子どもも関係なく感染症の恐怖はこれからもまだまだ続くと伊藤院長は警鐘を鳴らす。その中で院長が特に警戒しているのが「溶連菌感染症」だ。
溶連菌は正式には溶血性連鎖球菌といい、その菌が主にのどに感染して、発熱したり、のどが痛くなったり、場合によっては体や手足に発疹が出たりする。15歳未満の子どもに多く発症するが、大人にも感染し、溶連菌の一種である「人食いバクテリア」と呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症では手足の壊死を起こして発症してからわずか数十時間で死に至ることもあるというから恐ろしい。
さらに伊藤院長の心配は他にもある。
「最近、海外との交流が盛んになってインバウンドも増えてきました。そうなってくると今中国では流行っているのに日本では全く見られない百日咳のように、ここ数年日本では流行っていない感染症が出てくる恐れがあります。それともう1つ、私が心配しているのは去年流行したRSウイルスが今年も流行るのではないかということ。特効薬のないRSウイルスのターゲットとなるのは小さなお子さんなので、親御さんは注意しておくべきでしょう」
感染症にかからないようにするためには日頃から手洗いやうがいをしっかりやること、そして体調管理を心掛けることが大切だ。そのことを肝に銘じておきたいものである。