仕事を失うことは命を失うのも同然…見栄晴さんは下咽頭がんの手術を選ばなかった

公開日: 更新日:

お酒を飲めなくなることが何よりつらかった

 入院までは検査がたくさんあり、放射線治療用に首を固定する型を作ったり、放射線で影響が出そうな歯を4本抜いたりと、あわただしく準備をして、2月初旬に入院しました。そういえば腸のポリープが見つかって、それも切除してからの入院でしたし、入院したらすぐに抗がん剤と放射線治療も始まって、嵐のような日々でした。

 抗がん剤は、ほぼ24時間の点滴でした。その1日のために1週間入院し、次の2週間は自宅療養するのが1クール。計3クール行いました。同時進行で行う放射線は平日の毎日。7週間で計35回受けました。

 ひとつひとつ思い出せば、味覚障害になったり、異常に喉が渇いたり、体の節々が痛かったり、利尿剤で気持ち悪くなったり、熟睡できなかったり、放射線で喉の皮膚が焼けたりと、いろいろありました。でも口内炎はできませんでしたし、体重もそれほど落ちなくて、総じてすごくきつかった印象はありません。記憶から消しているのかもしれないですけど。

 それより僕、お酒が大好きなんです。だから、何よりつらかったのは、入院でお酒が飲めなくなることでした。入院前日までビールを飲んでましたからね。病気になったことより、友人たちと酔う楽しい時間がなくなることの方がへこみました。

 でも、今もお酒は飲んでいません。もしも再発したら、もう次は手術しか治療法がないと言われたからです。「ノンアルコールならいいよ」と先生には言われましたが、それを飲むくらいなら飲まない方がいいと思って……。だから、家庭ではもっぱら運転手です。いつでも運転できる状態ですからね。

 やっぱり、再発や転移の心配はずっとあります。とりあえず5年は何もないようにと祈るばかり。高価なマヌカハニーや、先生や看護師さんにすすめられたアミノ酸が入っているサプリメント、首のクリームやうがい薬など、いいと言われたものは全部やってます。確実に良くなったのは便の状態です。お酒を飲まなくなってから、本当に便がキレイになりました(笑)。

 今年の総括としては「良かった」です。でもそれは良くないことがあったから、今言えることなんですよね。つまり、当たり前のことができることって幸せなんです。それに気づいた一年でした。

(聞き手=松永詠美子)

▽見栄晴(みえはる)1966年、東京都出身。15歳のときにバラエティー番組「欽ちゃんのどこまでやるの!」(テレビ朝日系)の萩本見栄晴役オーディションに合格し、人気者に。その後もドラマ、舞台、バラエティー、CMなどで活躍し、現在はフジテレビONE「競馬予想TV!」で司会を務めるなど競馬関連番組にレギュラー出演している。

■本コラム待望の書籍化!愉快な病人たち(講談社 税込み1540円)好評発売中!

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  2. 2

    大阪・関西万博の前売り券が売れないのも当然か?「個人情報規約」の放置が異常すぎる

  3. 3

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  4. 4

    ヤクルト茂木栄五郎 楽天時代、石井監督に「何で俺を使わないんだ!」と腹が立ったことは?

  5. 5

    バンテリンドームの"ホームランテラス"設置決定! 中日野手以上にスカウト陣が大喜びするワケ

  1. 6

    菜々緒&中村アン“稼ぎ頭”2人の明暗…移籍後に出演の「無能の鷹」「おむすび」で賛否

  2. 7

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  3. 8

    ソフトバンク城島健司CBO「CBOってどんな仕事?」「コーディネーターってどんな役割?」

  4. 9

    テレビでは流れないが…埼玉県八潮市陥没事故 74歳ドライバーの日常と素顔と家庭

  5. 10

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ