(10)突然の「明日退院」。父は頼りにならない…母の面倒はだれが

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 示された日付は、母の退院からちょうど10日後。「ただし、東京に住んでいる娘さんは決してお母さまと接触しないでください、もし接触したら診察できません」と言われてしまった。時は2020年8月のお盆前。ここでも新型コロナウイルスによる制限が立ちはだかってきた。

 コロナ禍でなければ、パソコンを抱えて実家に帰ればなんとかできるかもしれない。しかし私が帰省するわけにはいかなくなった。10日間もできてしまう空白期間をどうしようと頭を抱えた。

 ひとりっ子なので、他に頼れる人の当てもない。そこで、母が熱中症で入院してからというもの、何かと気にかけてくれていた3人の叔母たちに相談すると、「お母さんの退院日からS認知症専門医院の診察までは私たちが請け負うよ!」と立ち上がってくれた。

 母が妹たちと仲が良いことは知っていた。前年秋に近所の友人が急逝し、落ち込みがちになっていた母が、朝から晩までかける「さびしい」という長電話に気長につきあってくれていたことも聞いていた。

 さんざん迷惑をかけていただろうに、手伝いを申し出てくれて本当にありがたいことだった。(つづく)

▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。

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