2022年プロ野球ドラフト1位候補5人の「強みと課題」をあぶり出した
■河野佳(大阪ガス・投手)
2022年のドラフトは目玉候補不在といわれるが、逸材はいる。社会人では大阪ガス・河野佳投手(20=広陵)がナンバーワンの呼び声が高い。粒揃いの大学生は、投打二刀流の日体大・矢沢宏太投手(3年=藤嶺藤沢)、東京六大学通算10本塁打の左のスラッガー、早大・蛭間拓哉外野手(3年=浦和学院)、同62安打の立大・山田健太内野手(3年=大阪桐蔭)。高校生では昨夏の甲子園を沸かせた京都国際・森下瑠大投手(2年)をピックアップ。1位候補5人の長所と短所をあぶり出した。
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▼黄金世代の社会人MVP右腕
最速151キロ右腕・河野佳(大阪ガス・投手)は広陵高から入社2年目の昨年、優勝した日本選手権で5試合中4試合に登板。19イニング無失点で2大会連続優勝に大きく貢献し、MVPを受賞した。都市対抗では無四球完封勝利を挙げるなど、抜群の安定感を誇る。
パ・リーグのスカウトがこう言う。
「実績は申し分ない。コントロールが良くて球にキレがある。スライダーと右打者の外角へ逃げるカットボールがいい。完成度が高く、大崩れしない。計算できる投手。高卒なのでまだハタチと若いのがいい」
課題はあるか。
「フォークは試行錯誤中で、落ちるボールの精度を上げることですね。それほど大きくない(176センチ)ので、馬力がないとか、将来性がどうとか、各球団の判断が分かれるところ。といっても、則本(楽天=178センチ)、山岡(オリックス=172センチ)、山本由伸(オリックス=178センチ)だって大きくありませんから、ウチの球団は気にしませんが……」(前出のスカウト)
同学年にはヤクルト・奥川、ロッテ・佐々木朗、オリックス・宮城ら、すでにプロで活躍する選手も多い。ドラフト1位入団で、来年は同じ土俵に立ちたいところだ。
■矢沢宏太(日体大・投手)
▼最速150キロ左腕&3割4番のリアル二刀流
矢沢宏太(日体大・投手)は173センチ、70キロと細身の体形ながら、投げては最速150キロ。2年秋には打率.368で外野手として、昨秋は投手としてベストナインを獲得した。最近は「4番・投手」で出場する。エンゼルスの大谷をほうふつさせる左腕の二刀流だ。
昨年12月の大学日本代表候補選考合宿の50メートル走で全選手中トップの5秒8をマークした。
セ・リーグのスカウトが証言する。
「上背はないが打球を遠くに飛ばせる。打者としては雄平(ヤクルトを引退)タイプ。足が速いのもいい。投手としては左腕で150キロを投げられれば、それだけで評価は上がる。カーブ、チェンジアップ、フォークも投げるが、スライダーのキレがいい。現段階で投手、野手の両方でドラフト上位指名の可能性があります」
■森下瑠大(京都国際高・投手)
▼センス抜群の野球小僧
森下瑠大(京都国際高・投手)は昨夏、2年生エースとしてチームを甲子園4強に導いた。3回戦の二松学舎大付戦で本塁打と決勝三塁打を放つなど打撃も非凡なものがある。
「投球、打撃の両方にセンスを感じる。いわゆる野球小僧ですね。コントロールが良くて変化球の精度が高い。直球に伸びがあって緩急がつけられる。変化球を投げる際も腕の振りが同じで、球の出どころが見えにくい。課題は球速と馬力。直球の最速は143キロだけど、実際は130キロ台が多い。現状は3位といったところだが、ここがクリアできれば、1位の12人に入ってくる可能性は十分あります」(セ・スカウト)
■蛭間拓哉(早大・外野手)
▼プロは左打者が飽和状態も勝負強いスラッガー
東京六大学リーグ現役トップの10本塁打。通算39安打の半数以上が長打のスラッガーで勝負強さも兼ね備えるのが、蛭間拓哉(早大・外野手)だ。
これを証明したのが2年秋の早慶戦だ。第1戦で木沢(ヤクルト)から決勝2ラン。続く第2戦でも、1点を追う九回に起死回生の逆転2ランをバックスクリーンに叩き込んだ。
パ・スカウトがこう言った。
「広角に長打が打てる。阪神・佐藤輝級といっていい。それに50メートル5秒台の脚力も魅力。大学ナンバーワン野手の評価だが、プロは全体的に左打者が多く、飽和状態。最近のドラフトは実力順じゃなくて人気順。実力はトップでも、左打者ということで各球団の評価が分かれる可能性はあります」
■山田健太(立大・内野手)
▼希少価値のある「右の内野手」
大阪桐蔭では同期の根尾(中日)らと甲子園春夏連覇した山田健太(立大・内野手)。立大では1年春から出場し、3年秋までに現役ではリーグ最多の通算62安打をマークしている。
「高校時代は根尾や藤原(ロッテ)の陰に隠れていたけど、当時からいい選手だった。大学に入って順調に成長していて、学年を経るごとに良くなっている。ミート力があって飛距離も出る打撃が持ち味。腰高の二塁の守備が課題だったけど、最近は安定感が出てきた。右打者なので評価は何割か増しになります。早大の蛭間とは逆で、プロは今、右打者が少ない。特に右の内野手は希少価値があるので、いざフタを開けてみたら大人気になっているかもしれない。DeNA牧(中大出身)のように覚醒する可能性を秘めた選手です」(パ・スカウト)