ドラフト指名後に選手のマイナスの性格が分かって、引っ繰り返りそうになることもある
面談が終わるなり、部長がオレの肩をつついてきて、「おい、おい、アイツ、大丈夫か? 覇気はねえし、とてもじゃないが、これからプロの世界で勝負しようって感じじゃねーぞ」と、タメ息をついたから、言ったんだ。
■「ウソだろ…」
「オレは会議でも言いましたよね、5位か6位の下位で取るべき選手だって。実力はあるけど、性格というか精神面が不安だからです。けど、部長やエライさんが実際に球場であの選手を見て『先発ローテに入ってくるんじゃないか?』って。数字大好きなエライさんなんて『能力の数値もバツグンにいい』と小躍りしてたほど。部長が口を酸っぱくして、結果や数字だけで判断するなって言うから、性格も調べたうえで下位で取るべき選手だって言ったのに……」
案の定、その左腕はプロ入り後、サッパリ。先発ローテどころか、もっぱらファーム暮らし。結果が出ないのを、コーチのせいにしてるくらいだ。
つい先日、部長とサシで飲む機会があったんで、伸び悩む左腕のことを話題にしたら、「おまえがいつも、そうやって選手の見極めをしてたら、言うことを信用もしたんだが……。ドラフト前に選手の性格を正確に把握するのは難しいからな。指名後に選手のマイナスの性格が分かって、ウソだろ……ってひっくり返りそうになることもある」って。部長やエライさんの信用を勝ち取るには結局、地道に結果を出し続けていくしかないって思ったね。
(プロ野球覆面スカウト)