賛否渦巻く阪神・岡田采配“7回84球完全”の村上交代、3人の専門家どう見たか「野手出身ならではの判断」
高橋善正氏は「投手の成長を促す判断をして欲しかった」
1971年に史上12人目の完全試合を達成した高橋善正氏はこう言う。
「私が村上だったら、グラブを投げつけ、ベンチを蹴っ飛ばしていましたね。村上は今季初登板とはいえ、昨年のウエスタン・リーグの投手2冠で阪神のエース候補でしょう。球数もまだ84球だった。完全試合ができたかはともかく、白黒つくまで投げさせることで責任が生まれるし、記録を達成すれば大きな自信になる。いずれにしろ、得難い経験になりますよ。日本シリーズで中日の落合監督が同じようなことをやったときも頭にきたが、日本一が決まるという試合の重要性を考えれば、まだ理解はできた。この日の岡田監督の交代策は勝負に徹したと言えば聞こえはいいが、まだシーズンは始まったばかり。若い投手の成長を促す判断をして欲しかった」
90年代に巨人の「勝利の方程式」として活躍した橋本清氏はこう言う。
「当然、賛否を呼ぶ交代で、並の監督なら逡巡してもおかしくない。それでも、岡田監督はスパッと代えた。個人のために野球をやっているのではない、“アレ”のためにやっている──むしろ、そういう岡田さんの信念というか、凄みを感じました。打たれる前に代えることで、村上が自信を得るということもある。もし、自分が村上の立場だったら? それは……一生に一度あるかないかの記録ですから、投げたい! と心の中で叫ぶと思う(笑)」
ただ、交代を告げられた村上はベンチで笑顔を浮かべ、満足そうにナインの祝福に応じていた。
「そうなんです。投手の分業制が進み、米国からQS(6回以上を自責点3以内)なんていう指標も入ってきて、先発投手に完封・完投への意識がどんどん希薄になっていることを改めて痛感させられた。百何十球も投げるなんてバカなことはする必要はありませんが、それでも完投・完封を目指すことで間違いなく投手としてのレベルは上がる。当たり前のように6回、7回でお役御免という姿勢は正直、寂しいですね」(高橋氏)
賛否を呼ぶ岡田采配は図らずも、“当世投手気質”も浮き彫りにした。