「花の残日録」小川征也著
45歳の弁護士、百田は、主治医に紹介された大学病院で、膵臓に腫瘍があり、リンパ節に転移していると告げられた。手術を受けて退院後1カ月で仕事に復帰しようと考えたが、医師は百田に緩和ケアを受けろと勧める。仕事以外に、書きかけの長編小説を完結させたいし、実家に預けたクサ亀とも和解したい……。
百田は主治医に緩和ケアを依頼し、モルヒネを使うことになったらアヘンにしてほしいと頼んだ。グレアム・グリーンの小説に出てくる、アンナン娘に介添えをしてもらうアヘン吸引者を真似たかったのだ。そして、その日常をハードボイルドにつづろうと決意する。
がんになった中年弁護士の終活の日々をユーモラスに描く。(作品社 1600円+税)